このページでは、減資(資本金等の減少)の手続について整理しています。

減資とは、一般的に、資本金、資本準備金、利益準備金の額の減少を指します。資本金、資本準備金、利益準備金は、いずれも、会社の業績に連動せず、減少させる場合には、一定の手続きが必要になります。このページでは、以下資本金、資本準備金、利益準備金を「資本金等」といいます。

なお、資本勘定全体について、確認したい方は以下のリンク先をご参照ください。

1 欠損填補目的の場合の資本金等の減少手続

⑴ 資本金の減少の手続

株主総会決議※1
  ↓
債権者保護手続
  ↓
変更登記会社法911条3項5号が必要になります。

※1)株主総会決議における決議方法は以下の内容になります。

定時株主総会の日における欠損の額を超えない範囲で資本金の額を減少する場合株主総会の普通決議会社法309条2項9号
上記以外株主総会の特別決議会社法309条2項9号

⑵ 準備金の減少の手続  

原則として株主総会普通決議(会社法448条1項)。例外的に取締役会決議※2
      ↓
則として債権者保護手続(会社法449条1項)。例外的に不要となる場合があります※3
なお、準備金は登記事項でないため、変更登記は不要です。

上記の手続における例外については以下のとおり。

※2株主総会が不要となる場合
定款により剰余金の処分が取締役会へ授権されている場合(会社法459条1項)、取締役会の承認でも可能(会社法459条1項2号、436条3項)。

※3)権者保護手続が不要になる場合
定時株主総会において、定時株主総会の日における欠損の額を超えない範囲で準備金の額を減少する場合には、債権者保護手続は不要です(会社法449条1項ただし書)。

2 欠損填補以外場合の資本金等の減少

⑴ 資本金の減少手続

原則として株主総会の特別決議会社法309条2項9号) 例外的に取締役会決議で可能です(※4
 ↓
債権者保護手続
  ↓
変更登記会社法911条3項5号が必要になります。

※4増減資を同時に行う場合で(DESを含む)、資本金の額が従前を下回らない場合には取締役会決議で可能です(会社法447条3項)。

イ 準備金の減少手手続

株主総会の普通決議会社法448条1項、2項
   ↓
債権者保護手続 例外的に債権者保護手続が不要になります(※5)。
準備金は登記事項でないため、変更登記は不要

※5)減少する準備金の額の全部を資本金とする場合は、債権者保護手続は不要です(会社法449条括弧)。

3 債権者保護手続(会社法449条)

⑴ 債権者保護手続とは?

債権者保護手続とは、会社が資本金又は準備金の額を減少する場合に、会社債権者が異議を述べることができる制度です。
なお、債権者異議手続が終了しない限り、減資の効力は生じません(6項)。

上記2でも記載されていますが、以下の場合、債権者保護手続は不要です。
・減少する準備金の額の全部を資本金とする場合
・定時株主総会で欠損補填のために準備金を減少する場合

⑵ 具体的な手続・効果

会社法449条2項各号(計算規則152条)の事項を、官報公告し、かつ知れてる債権者に対して各別に催告しなければなりません。ただし、官報公告に加えて定款に基づき日刊新聞紙、電子公告で公告する場合は催告は不要です。

異議期間は1ヵ月以上必要です。

・債権者が期間内に異議を述べなかったときは、承認をしたものとみなされます。
・債権者が期間内に異議を述べたときは、資本金等の額の減少により当該債権者を害するおそれがないときを除き、当該債権者に対し、弁済、相当の担保の提供、又は相当の財産の信託しなければなりません。

⑶ 関連裁判例

大判S7.4.30:「知れてる債権者」の内容について説示した裁判例
「知れてる債権者」には、会社と係争中の債権者も含まれるとしました。

大阪高判H29.4.27:「害するおそれないとき」の内容について説示した裁判例
資本金の額の減少における『債権者を害するおそれ』については、当該資本金の額の減少によって抽象的に将来に向けて剰余金の分配可能性が高まる(会社財産に対する拘束が弱まる)というだけでなく、資本金の額の減少が債権者により具体的な影響を与えるかどうかを検討して判断すべきである。その判断に当たっては、資本金の額の減少の直後に剰余金の配当等が予定されているか否かに加え、当該会社債権者の債権の額、その弁済期、当該会社の行う事業のリスク、従来の資本金及び減少する資本金の額等を総合的に勘案し、当該会社債権者に対して不当に付加的なリスクを負わせることがないかという観点から行うべきである」としました。

4 資本金減少無効の訴え(828条1項5号、2項5号)

資本金の額の減少手続に関する瑕疵は、訴えをもってのみ主張することができるとされています(会社法828条1項5号)。資本金減少無効の訴えの概要は以下のとおりです。

提訴権者株主、取締役、清算人、監査役、執行役、破産管財人、資本金の額の減少について承認をしなかった債権者
提訴期間資本金の額の減少の効力が生じた日から6か月以内
判決の効果第三者に対しても効力を有します(会社法838条)。また、将来に向かってその効力を失います(会社法839条)。
無効事由手続的瑕疵