このページでは、資本勘定(純資産の部)の基本について整理しています。

普段あまり意識していないと思われますが、会社の支配権に直結するところですので、理解しておくべき部分です。

1 純資産の部の区分(会社計算規則76条、会社法446条、会社計算規則149条)

純資産の部の区分は以下のとおりです(会社計算規則76条

⑴ 株主資本

資本金

新株式申込証拠金

資本剰余金(資本剰余金の中に資本準備金があります。資本剰余金の中で資本準備金を除いた部分を、その他資本剰余金と呼びます。つまり資本剰余金=資本準備金+その他資本剰余金となります。)

利益剰余金(利益剰余金の中に利益準備金があります。利益剰余金の中で資本準備金を除いた部分を、その他利益剰余金と呼びます。つまり利益剰余金=利益準備金+その他利益剰余金となります。)

自己株式/自己株式申込証拠金(自己株式は控除項目、つまりマイナス表示です)

なお、資本剰余金の中の資本準備金を控除した「その他資本剰余金」及び、利益剰余金の中の利益準備金を控除した「その他利益剰余金」の合計が分配可能額計算のスタートとなります。自己株式の帳簿価格等は、分配可能額から控除されます。

(注)会社計算規則76条は純資産の区分として、上記のとおり、資本準備金を資本剰余金の中に、利益準備金を利益剰余金の中に含めています。しかしながら会社法446条に定める「剰余金」には、資本準備金及び利益準備金は含まれていません。つまり、会社法上の「剰余金」は、「その他資本剰余金」と「その他利益剰余金」の合計です(=資本準備金、利益準備金は含まれていません)。用語が混乱しやすいので注意が必要です。

⑵ 評価・換算差額等

有価証券、デリバティブ取引、土地が時価評価される場合、評価差額が資本の部に計上されるものです。これらの評価差額は損益計算書に計上されない場合、資本勘定に表記されることになります。

・その他有価証券評価差額金

・繰延ヘッジ損益

・土地再評価差額金

その他有価証券評価差額金土地再評価差額金がマイナスである場合は、分配可能額から控除されます。

⑶ その他

新株予約権 新株予約権/自己株式予約権からなりますが、自己新株予約権は控除項目です。

株式引受権

2 「資本金」に関する規制。資本金を増減できる場合は限定されています。

⑴ はじめに

資本金額は登記事項です(会社法911条3項5号

・現行会社法に、最低資本金の定めありませんが、純資産額が300万円を下回る場合は、剰余金の配当などはできません(会社法458条)。

資本金の増減は頻繁に起こるものではありません。資本金の増減に関する規制等は概要以下のとおりとなります。資本金が増減する局面は、限定的です。

⑵ 資本金が増加(増資)する場合

資本金が増価する最も典型的な場面は、株式の発行に際して、株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額が増加します(会社法445条1項)。ただし、払込み又は給付に係る額の2分の1を超えない額は、資本金として計上しないことができます。その場合、資本金として計上しない金額は、資本準備金に計上しなければなりません(会社法445条2項、3項

一方で、準備金又は剰余金を資本金に組入れた場合、会社財産額に変更はなく、単に資本組入が増価します(無償増資会社法448条1項2号、会社法450条1項2号)。この場合、当然ですが、同額準備金又は剰余金が減少します。

⑶ 資本金が減少(減資)する場合

資本金は、会社の信用力を示すものですので、資本金の減少(減資)には厳格な手続が要求されています。

以下のリンク先をご参照下さい。

2 「準備金」に関する規制。準備金は、基本的に資本金に準じた取り扱いがされています。

資本準備金、利益準備金は以下の場合に、それぞれ増加・減少します。資本準備金と、利益準備金では、その源泉が異なります。資本準備金は資本取引、利益準備金は通常の取引(損益)を源泉とします。

なお、準備金は分配可能額に含まれせん。

⑴ 資本準備金の増加

設立又は株式の発行に際して、株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額のうち、資本金として計上されなかった額(会社法445条2項、3項)。

その他資本剰余金を原資とする剰余金の配当をする場合に、積立が要求される額(会社法445条4項)。積立は、配当により減少するその他資本剰余金の額の10分の1です。利益準備金と合計した準備金の額が配当する日における資本金の4分の1を超えている場合には、積立は不要となります(会社計算規則22条)。

・組織再編において増加する資本準備金の額。

資本金又はその他資本剰余金を減少し、資本準備金への組入れた額(会社法447条1項2号、451条1項1号)。

⑵ 利益準備金の増加

その他利益剰余金を源泉として剰余金の配当をする場合に、積立が要求される額(会社法445条4項)。積立は、配当により減少するその他利益剰余金の額の10分の1です。資本準備金と合計した準備金の額が配当する日における資本金の4分の1を超えている場合には、積立は不要となります(会社計算規則22条)。

・組織再編において増加する利益準備金の額。

その他利益剰余金を減少し、利益準備金への組入れた額(会社法447条1項2号、451条1項1号)。

⑶ 資本準備金・利益準備金の減少

資本準備金・利益準備金が減少する場合は資本金に準じます。以下のリンク先をご参照ください。なお、準備金を資本金に振替えることは株主総会の普通決議で可能です(会社法448条1項2号

エ その他資本剰余金、その他利益剰余金の増減

その他資本剰余金、その他利益剰余金の増減事由は、配当と密接に関連していますので、下記のリンク先で説明をしています。