このページでは、剰余金の処分(減少)と配当の整理について整理しています。手続及び、配当可能利益の計算が少々複雑です。剰余金の処分の種類を確認したうえで、剰余金の処分として最も多い配当について確認をしていきます。
なお、資本勘定全体について確認をしたい方は、以下のリンク先をご参照ください。
1 剰余金の処分の種類
剰余金の処分としては以下のものがあります。なお、資本金・準備金への組入れ、任意積立金の計上・損失処理は、会計上の科目の振替えですので、社外流出が生じるわけではありません。
内 容 | 決 議 機 関(株主総会はいずれも原則として普通決議) |
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配当 | 株主総会決議(会社法454条1項)又は取締役会決議(会社法454条4項、459条) |
資本金・準備金への組入れ | 株主総会決議(会社法450条2項、451条2項) |
任意積立金の計上・損失処理 | 株主総会決議(会社法452条) |
2 剰余金の配当とは
⑴ 配当の対象
配当は株式の数に応じて行わなければなりません(会社法453条)。
ただし、自己株式には配当されません(会社法453条かっこ書)。
また、種類株式(会社法108条1項1号)の内容によっては、配当がされないことがあります。種類株式については、以下のリンク先をご参照ください。
定款で、基準日を定めて、基準日現在の株主に配当を行う旨を定めることが一般的です(会社法124条1項)。
⑵ 配当の方法
日本に住所等を有しない株主を除き、株主名簿の住所又は株主が株式会社に通知した場所に会社の費用負担で交付しなければなりません。ただし、 株主の責めに帰すべき事由によって費用が増加したときは、増加額は株主の負担となります(会社法457条2項)。
⑶ 配当支払請求権の性質
一度発生した配当支払請求権は株式とは独立した請求権となります。
よって、株式が譲渡されても当然には移転しません。また、株式とは別に債権譲渡することも可能です。
3 剰余金の配当の手続
⑴ 決議機関(原則) 株主総会における普通決議が必要です。
配当を行う場合には、原則として株主総会の普通決議が必要です(会社法454条1項、4項)。
ただし、配当財産が金銭以外の財産であり、かつ、株主に対して金銭分配請求権(配当財産に代えて金銭交付を求める権利)を与えない場合には、特別決議が必要とされています(309条2項10号)。
決議すべき事項は以下のとおりです。
① 配当財産の種類及び帳簿価額の総額
② 株主に対する配当財産の割当てに関する事項
③ 剰余金の配当がその効力を生ずる日
④ 配当財産が金銭以外の財産であるときは、以下の事項
株主に対して金銭分配請求権(配当財産に代えて金銭交付を求める権利)を与えるときは、その旨及び行使期間
(末日は配当の効力発生日より前としなければならない)
配当財産の割当てに保有株式数の下限を設定するときは、その旨及びその数
⑵ 例外その1 定款の定めがある場合、中間配当は取締役会決議で配当が可能です。
取締役会決議により中間配当(金銭配当に限る)をすることができる旨が定款で定められている場合、取締役会決議で中間配当が可能です(会社法454条5項)。
なお、定款で中間配当を定めることができるのは、1事業年度の途中において1回に限られます。
⑶ 例外その2 定款の定めがある場合、会計監査人設置会社は取締役会決議で配当が可能です。
会計監査人設置会社で、かつ取締役の任期が1年以下の会社で、監査役会設置会社又は委員会設置会社は、定款で、配当を取締役会決議事項とすることができます(会社法459条)。
かかる定款の定めは、最終事業年度に係る計算書類が法令及び定款に従い会社の財産及び損益の状況を正しく表示しているものとして計算規則155条で定める要件(会計監査人の無限定適正意見など)に該当する場合に限り効力を有します(会社法459条2項)。
さらに、剰余金の配当を株主総会決議で定めない旨を定めることもできます(会社法460条)。
4 配当要件
配当を行うためには、以下の要件を満たすことが必要です。
① 会社の純資産が300万円以上であること(会社法458条)
⓶ 分配可能限度額の範囲内で配当するものであること(会社法461条)
③ 準備金の額が資本金の額の4分の1に満まで、剰余金の配当により減少する剰余金の額の10分の1の額を資本準備金又は利益準備金として計上すること(会社法454条4項、会社計算規則22条)
5 分配可能額とは
分配可能額は、通常は、その他剰余金(その他資本剰余金+その他利益剰余金)の額と考えれば足りますが、細かくは以下のリンク先をご参照ください。