このページでは、中小企業を念頭に、少数株主を整理する方法について整理しています。
少数株主を整理する方法は、簡単ではありません。時間をかけて少しづつ、整理をしていくことが肝要です。
なお、少数株主を放置しておくことの弊害は、以下に整理していますので、リンク先をご参照下さい。
1 はじめに
少数株主を整理する方法としては、以下のようなものがあります。
なお、会社が自己株式を取得する場合には、財務制限条項(配当可能利益の制限)が問題となる可能性がありますので注意が必要です。財務制限条項は以下のリンク先をご参照下さい。
2 任意交渉による買取り
任意交渉による買取が可能であれば、任意交渉により、株式を買い取ることが検討します。
買主としては、現経営者以外に、後継者候補、対象会社などが考えられます。会社の状況や税務上の取扱いによって買主を決めることになると考えられます。
3 強制的な買取方法
強制的に少数株主を整理する方法としては、以下のものが準備されています。いずれを利用するかは、ケースバイケースです。実際に実行する場合には、弁護士や税理士に相談することをお勧めします。なお、以下にご紹介する方法以外にも、現金株式交換、現金合併といった方法もありますが、税務上のデメリットもあり、使われることはほとんどありませんので、ここでは紹介致しません。
⑴ 特別支配株主の株式等売渡請求を利用する方法
特別支配株主の株式等売渡請求は、キャッシュアウトを容易にするために平成26年会社法改正により新設された制度です(179条~179条の8)。
経営者グループが90%以上の株式を所有している場合に利用できる制度です。
詳細は以下のリンク先をご確認ください。
⑵ 全部取得条項付種類株式を利用する方法
種類株式の一つである全部取得条項付種類株式を利用する方法です。
経営者グループが3分の2以上の議決権を保有していることが必要です。
なお、平成26年会社法改正で、手続の適正化を確保するために、事前開示手続、事後開示手続、株主の差止請求などが導入されました(171条~173条の2)。
詳細は以下のリンク先をご確認ください。
⑶ 株式の併合により端数となる株式の買取請求を利用する方法
株式を併合することで、少数株主を端株にすることで少数株主を整理する方法です。
経営者グループが3分の2以上の議決権を保有していることが必要です。
なお、平成26年会社法改正で、手続の適正化を確保するために、事前開示手続、事後開示手続、株主の差止請求などが導入されました(180条~182条の6)。
株主総会の特別決議により株式を併合し、端株を競売又は任意売却等により少数株主を整理する方法です。
⑷ 所在不明株主の株式売渡制度を利用する方法
所在不明株式について、裁判所の許可を得て、売却し、また、会社がこれを買い取ることができる制度です(197条)。
項目 | 内容 |
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対象となる株式 | ・株主に対してする通知又は催告が5年以上継続して到達しないことなどにより、株主に対する通知又は催告をすることを要しないもの(会社法197条1項、196条1項、294条2項) ・その株式の株主が継続して五年間剰余金の配当を受領しなかったもの(会社法197条1項) |
手続 | 取締役会決議等(取締役全員の同意 会社法197条2項) ↓ 裁判所への許可申立て(市場価格がない場合。なお、裁判所への許可申立ておする場合、評価書を添付する。) ↓ ・株主その他の利害関係人が一定の期間内に異議を述べることができる旨その他法務省令で定める事項の公告 ・当該株式の株主及びその登録株式質権者に対する、各別の催告 ↓ 売却の実行 |
備考 | 消滅時効期間は10年 |