このページは、属人的株式(会社法109条2項)について整理しています。

属人的株式とは、株主毎に異なる定めをすることが可能な株式を指します。例えば、ある株式だけ議決権を多くするなどのことが可能になります。閉鎖会社(全株が譲渡制限株式)でのみ、発行が許されています。

種類株式と同様の機能を有していますが、種類株式との違いとしては、種類株式は登記されますが、属人的株式は登記されない点が挙げられます(会社法911条3項7号)。

1 属人的株式の内容

⑴ 内容

配当残余財産の分配株主総会における議決権について、株主毎に異なる定めをすることが可能とされています。これを属人的株式と呼びます。

具体的には、
特定の株主が所有している株式に特別の権利を付ける方法(VIP株と呼ばれています)
特定の株式に特別の権利を付ける方法(比重株と呼ばれています)
があります。

VIP株は属人的な権利で株式の譲渡がされても移転しませんが、比重株は株式譲渡に伴い権利も移転するという違いがあります。

⑵ 発行条件・設定方法

閉鎖会社(全株が譲渡制限株式)でなければ、発行できません

発行するためには、定款で定める必要があります(定款変更が必要であれば株主総会特別特殊決議が必要となります)。

2 属人的株式の具体的な活用例

・特定の者が保有する株式について議決権を増やす
・特定の者以外の株式の議決権を減らす
・上記にあわせて、特定の者の株式については配当や残余財産の分配を厚くすることで平仄をとる
などのことが考えられます。

3 裁判例

東京地立川支判H25.9.25属人的定めの効力につき株主平等の原則に反し、定款変更の株主総会決議を無効とした裁判例(控訴後和解)
甲社において、議決権及び剰余金の配当につき株主毎に異なるものとする規定の定款変更決議を行った結果、甲社の発行済株式の14.7%を有していたXの議決権比率が0.17%まで減少したため、Xが株主平等原則に違反するとして、総会決議無効の訴えを提起しました。
本判決は「属人的定めの制度についても株主平等原則の趣旨による規制が及ぶと解するのが相当であり・・・・差別的取扱いが合理的な理由に基づかず、その目的において正当性を欠いているような場合や、特定の株主の基本的な権利を実質的に奪うものであるなど、当該株主に対する差別的取扱いが手段の必要性や相当性を欠くような場合には、そのような定款変更をする旨の株主総会決議は、株主平等原則の趣旨に違反するものとして無効になる」などとしてXの請求を認めました。