株主総会で株主の代理人弁護士の出席を認めないことは違法か(札幌高判R1.7.12)
いわゆる同族会社において、株主間で紛争になることは少なくありません。
相続が発生して相続人に株式が分かれたり、最初は仲良く株式を持ち合い経営していた兄弟仲が悪くなったりするようなケースが典型です。東京地方裁判所民事8部は、会社法関係の紛争処理を専門に行っているのですが、かなりの割合が、このような同族間の争いであると聞いたことがあります。
さて、そのような紛争が発生した場合、多数派株主から選任された経営者が株主総会において、少数株主の代理人として弁護士が出席することを拒否する戦法をとることがあります。これは許されるのでしょうか?
その場合は、まず定款で、株主総会で議決権を行使できるのを株主に限るとの制限がある場合(多くの定款に、このような定めが入っています)、株主でない弁護士は出席できなくなりそうです。なお、このような定款が有効であることは最高裁判例で認められています(最判S43.11.1)。理由は株主総会が株主以外の第三者によって錯乱されることを防止するという合理的な理由による相当な制限だからというものです。
では、少数株主の代理人に選任された弁護士はその会社の株主ではないとして、この定款に基づき、出席を拒否することができるのでしょうか?。
拒否できるとした裁判例も複数あります(東京地判H27.10.29など)。しかしながら、札幌高判R1.7.12(ジュリスト1550号2頁)は、弁護士の出席を拒否できないとしました。理由は、弁護士であれば株主総会を錯乱させるおそれがないと容易に判断できるからというものです。
「本当かな?」という感じはします。弁護士だから余計に錯乱させるようにも思われます。ただ、弁護士はいわゆる不規則発言などをして総会を錯乱させることはないでしょう(仮に、そのような方法で錯乱させるとすれば、懲戒事由に該当しかねません。)。そういう意味では、弁護士は錯乱させるおそれがないということも言えるかもしれません。
いずれにしても、最高裁判例があるわけでもなく、下級審では判断がわかれていますので、まだ決着していない論点ということができます。
こういうところが、法律の難しいところですが、面白いところです!