このページは、取締役会の役割(権限)、招集、運営、事後処理について説明しています。
以下で公開会社とは、一部でも譲渡制限のない株式を発行している会社を、非公開会社又は閉鎖会社とは全発行株式が譲渡制限株式である会社を指します。譲渡制限株式とは、株式譲渡を行う場合、株主総会決議又は取締役会決議が必要な株式をいいます。
1 取締役会の役割(権限)
取締役会は、株主総会決議事項でなければ、業務執行に関する事項を決定することが可能です。もっとも、すべての取締役会で定めることは経営の効率性を損ないますし現実的ではありませんので、細かい事項については(代表)取締役に委任されています。
しかし以下の事項については、指名委員会等設置会社等を除き(代表)取締役に委任することはできません(①~⑦は362条4項)。
① 重要な財産の処分及び譲受け(取締役6名以上、うち社外取締役が1名以上の会社は、3名以上の特別鳥取締役による決議によることが可能 会社法373条1項)
② 多額の借財(取締役6名以上、うち社外取締役が1名以上の会社は、3名以上の特別鳥取締役による決議によることが可能 会社法373条1項)
③ 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
④ 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
⑤ 社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項
⑥ 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要な体制の整備(大会社などでは、かかる体制の整備は義務化されています)
⑦ 善意無過失の役員の責任の免除
⑧ 代表取締役・業務執行取締役の選定・解職(会社法362条)
2 取締役会の招集
⑴ 取締役の開催時期(開催頻度)
代表取締役等は、3箇月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければならないとされていますので(会社法363条2項)、取締役会は3か月1回は開催する必要があります。月1回開催する会社が多いようです。
なお、開催場所や時間について、特段法律上の規制はありません。
⑵ 招集権者(会社法366条)
原則として、各取締役が招集できます。
定款又は取締役会で、取締役会を招集する取締役を定めることも可能です。
この場合、招集権のない取締役は、招集権のある取締役者に対し、取締役会の目的である事項を示して、取締役会の招集を請求することができます。請求日から5日以内に、請求日から2週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、請求をした取締役は、取締役会を招集することができます。
監査役は、取締役が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき又は、取締役に法令若しくは定款に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、取締役(招集権者)に対し、取締役会の招集を請求することができます。請求日から5日以内に、請求日から2週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、監査役は、取締役会を招集することができます。(会社法383条2項、3項)。
株主(監査役設置会社、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)も、取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがあると認めるときは、取締役会の招集を請求することができます。請求日から5日以内に、請求日から2週間以内の日を取締役会の日とする取締役会の招集の通知が発せられない場合には、請求をした株主は、取締役会を招集することができます。(会社法367条1項、3項)
⑶ 招集通知(会社法368条)
取締役会を招集する者は、取締役会の日の1週間(定款で短縮可能)前までに、各取締役(監査役設置会社にあっては、各取締役及び各監査役)に対して招集通知を発しなければなりまえせん。取締役(監査役設置会社にあっては、取締役及び監査役)の全員の同意があるときは、招集の手続を省略して開催することも可能です。
参考裁判例:最判S44.12.2 東京地判S42.4.3
3 取締役会の運営(進行)
⑴ 成立要件
定足数:議決に加わることができる取締役の過半数(定款で引上げることは可能)。なお、代理出席は認められていません(定説)。定足数は、討議、議決の全過程を通じて維持される必要があるとされています(最判S41.8.26)。
なお、テレビ通話方式、会議電話での参加は可能と解されるとしています。
⑵ 運営
議事進行について法令上の定めはありません。議長も定めがなければ互選になりますが、定款で代表取締役を議長する旨、定めている場合がほとんどです。なお、議案に特別利害関係がある取締役は議長になれません(東京高決H8.2.8)。
代表取締役及び業務執行取締役は、3か月に1回以上、自己の職務の執行の状況を取締役会に報告しなければなりません。
参考裁判例:東京地判H22.6.30
⑶ 決議(会社法369条)
出席取締役の過半数(定款で引上げることは可能です)をもって決議します。なお、決議に反対の場合、取締役会議事録に異議をとどめておかないと、決議に賛成したものと推定されてしまいます(会社法369条5項)。
取締役会の決議は、会議の目的事項に限定されていません(株主総会につき会社法309条1項、298条1項2号参照)ので、会議の場で、新たな決議事項を提案することが可能です。
特別の利害関係を有する取締役は、議決に加わることができません(会社法369条2項)。
参考裁判例:
最判S44.3.28 解職請求されている代表取締役が特別利害関係を有する取締役に当たるとした判例
なお、委員会設置会社以外で、取締役の数が6名以上でかつ社外取締役がいる場合、重要な財産の処分及び譲受け並びに多額の借財については、3人以上の取締役で決議が可能とする定めを置くことができます(会社法373条)。これらの取締役を特別取締役と呼びます。
⑷ 書面決議(書面開催)について(会社法370条)
定款で定めておけば、取締役が取締役会の決議の目的である事項について提案をした場合、当該提案につき全取締役(当該事項について議決に加わることができるものに限る。)が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたとき(監査役設置会社にあっては、監査役が当該提案について異議を述べたときを除く。)は、当該提案を可決する旨の取締役会の決議があったものとみなすことが可能とされています。
参考裁判例 最判S44.11.27
4 取締役会議事録(会社法371条)
取締役会議事録を作成し、出席した取締役及び監査役は、これに署名又は記名押印しなければなりません(会社法369条3項)。なお記載内容は施行規則101条に詳細があります。取締役会議事録は、取締役会日から10年間、本店に備え置かなければなりませんらない。
株主は、その権利を行使するため必要があるときは、株式会社の営業時間内はいつでも、取締役会議事録閲覧又は謄写の請求をすることができます。ただし、監査役設置会社、監査等委員会設置会社又は指名委員会等設置会社では、裁判所の許可が必要とされています。なお、裁判所は、閲覧又は謄写をすることにより、会社又はその親会社若しくは子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは許可をすることはできません。
会社の債権者は、役員又は執行役の責任を追及するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、取締役会設置会社の議事録等について閲覧又は謄写の請求をすることができます。なお、裁判所は、閲覧又は謄写をすることにより、会社又はその親会社若しくは子会社に著しい損害を及ぼすおそれがあると認めるときは許可をすることはできません。
5 取締役会の決議の瑕疵について
取締役会の決議の瑕疵については、会社法に定めはなく、当然に無効と解されています(東京高判H9.12.4、最判S56.4.24、東京地判H7.9.20、最判S44.12.2、東京高判S60.10.30)。
ただし、無効な取締役会決議に基づく代表取締役の行為であっても、当然には無効とはなりません(最判S40.9.22)。