このページは、会社の機関に関する基本を整理しています。
このページでは、主に中小企業を念頭に、企業法務の基本的なルールを俯瞰します。上場関係の規制や、三委員会、監査等委員会については触れていません。
なお、株主総会、取締役会、監査役(会)は、多くの会社で導入されていますし、論点も多いところですので、それぞれ別のページで説明をしています。ここでは、機関全般及び、それ以外の機関について説明をしています。なお、本サイトは中小企業を念頭に記載していますので、会計監査人や委員会設置会社などについては、概要のご説明に留めています。
1 会社に設置すべき機関
⑴ 機関設定の選択肢 どのような機関設計ができるのか?
会社の機関設計は重要です。会社法は、機関についてはかなり柔軟に選択肢があります。重たい組織すると、対外的な信用力は増しますが、組織運営の機動力は失われます。何を重視するかによって、どのような組織で会社を運営するかが決まります。
会社法は、かなり柔軟に機関設定の自由を認めています。機関設定のバリュエーションは以下のリンク先のとおりとなります。
⑵閉鎖会社にするべきかか公開会社にするべきか?取締役会は設置すべきか?
本サイトは中小企業を念頭においています。中小企業の機関設計においては、①閉鎖会社にするか(譲渡制限株式のみの会社)、公開会社にするか、②取締役会を設置すべきか否かが、悩みどころになるかと思われます。そこで、閉鎖会社と公開会社の主な違い、取締役会設置会社と非設置会社の主な違いについて、以下のリンク先にまとめました。
2 株主総会、取締役、取締役会、監査役(会)
株主総会は最も基本的な機関である株主総会、取締役(会)、監査役(会)の手続等の詳細については、それぞれ別のページで説明をしています。以下のリンク先をご確認下さい。ここではそれぞれの機関の権限や役割について、確認をします。
⑴ 株主総会の役割や権限とは
株主総会は、株主を構成員として、組織、運営、管理その他一切の会社の意思決定を行う必要的機関です(会社法295条)。ただし、取締役会設置会社においては、株主総会は、会社法及び定款で定めた事項に限り、決議をすることができます(会社法295条2項)。株主総会の権限を、取締役会設置会社と非設置会社で整理すると、以下のようになります。
分類 | 権 限(条文は会社法) |
---|---|
取締役会設置 | ・会社法に規定する事項(取締役の選任・解任(329条)、定款変更(466条)など。)及び定款で定めた事項に限られます(295条2項)。 ・原則として招集通知に掲げられた議題のみを決議できる(309条5項)。 |
取締役会非設置 | ・会社法に規定する事項及び組織、運営、管理その他一切の事項について決議できます(295条1項)。 ・招集通知に掲げられた事項以外についても決議できます(309条5項)。 |
株主総会には、定時株主総会と臨時株主総会があります。(会社法296条)
株主総会の招集権者、招集手続、運営や事後処理などについては以下のリンク先をご参照下さい。
⑵ (代表)取締役の役割や権限とは
取締役会が設置されていない会社における取締役は、株主総会で決議する以外の事項に関する会社運営・管理に関する意思決定機関であり、業務執行機関であり、原則として会社を代表します。
取締役会が設置されている会社における取締役は、取締役会の構成員であり、原則として代表取締役のみが業務執行を行い、会社を代表します。なお、会社と取締役の関係は委任関係にあり(会社法330条)、取締役は会社に対して、善管注意義務を負います(民法644条)。
(代表)取締役の選任、解任、職務などについては、以下のリンク先をご参照下さい。
⑶ 取締役会
取締役会は、すべての取締役で構成され(会社法362条1項)、会社の業務執行の決定及び、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選任等を行う機関です。取締役会は、法令・定款で株主総会決議事項とされている以外の事項であれば、決議可能です。
取締役会の招集権者、招集手続、運営や事後処理などについては以下のリンク先をご参照下さい。なお、構成員ではありませんが、監査役(定款で会計監査に限定される場合を除く)は、取締役会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならないとされています(会社法383条1項)。
取締役会設置会社においては、取締役会が業務執行の意思決定を行い、代表取締役(会社法363条1項1号)、業務執行取締役(会社法363条1項2号)、業務執行権を有する者から委任を受けた取締役、使用人等が業務執行を行います。会社法362条4項に列挙されている重要事項以外は、業務執行の決定でも個々の取締役に委任できます(会社法362条4項)。
また、会社を対外的に代表するのは、代表取締役(会社法363条1項1号)ですが、一定の範囲で、(業務執行)取締役、支配人・使用人(会社法11条、14条、15条)が代理権を与えられています。
⑷ 監査役(会)
監査役(会)は、取締役の職務執行を監査する機関です。なお、会社と監査役の関係は委任関係にあり(会社法330条)、監査役は会社に対して、善管注意義務を負います(民法644条)。
監査役の選任、解任、職務などについては以下のリンク先をご参照下さい。
監査役が設置されていない会社と設置している会社では、株主の権利が以下のように異なります。監査役設置会社は、監査役がガバナンス強化の役割を果たすことから、株主によるガバナンスは後退します。
項目 | 監査役設置していない会社 | 監査役設置会社 |
---|---|---|
取締役の違法行為差止(会社法360条) | 取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に著しい損害が生ずるおそれがあるときは、差止請求が可能 | 取締役が会社の目的の範囲外の行為その他法令若しくは定款に違反する行為をし、又はこれらの行為をするおそれがある場合において、当該行為によって当該株式会社に回復することができない損害が生ずるおそれがあるときは、差止請求が可能 |
3 会計参与とは
会計参与とは、取締役と共同して、(連結、臨時)計算書類及びその附属明細書を作成する権限を有する機関です(会社法374条1項)。なお、会社と会計参与の関係は委任関係にあり(会社法330条)、会計参与は会社に対して、善管注意義務を負います(民法644条)。
会計参与の選任、解任、職務などは概要以下のとおりです。なお、設置している会社はほとんどないようです。
項目 | 内容 |
---|---|
主な権限 | いつでも、会計帳簿等等を閲覧及び謄写をし、又は取締役及び支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求めることができます。また、職務を行うため必要があるときは、子会社に対して会計に関する報告を求め、又は会社や子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます。(会社法374条2項、3項) |
主な義務 | ・会計参与報告を作成しなければなりません(会社法374条1項) ・計算書類等の承認を行う取締役会に出席し、必要に応じて意見を述べなければなりません(会社法376条1項) |
主な資格 | 公認会計士若しくは監査法人又は税理士若しくは税理士法人でなければなりません(会社法333条1項)。 また会社又は子会社の取締役等と兼務することは禁止されています(会社法333条3項)。 |
選任 | 株主総会普通決議(会社法329条1項)。会計参与は、株主総会において、会計参与の選任について意見を述べることができます(会社法345条1項)。 |
任期 | 原則2年ですが、閉鎖会社は定款で10年まで伸長できます(会社法334条1項、会社法332条)。 |
終任 | 任期満了、辞任に加えて、株主総会普通決議により解任できます(会社法339条1項)。会計参与は、株主総会において、は解任又は辞任について意見を述べることができます(会社法342条1項)。 |
報酬 | 定款にその額を定めていないときは、株主総会の決議によって定めます(会社法379条1項)。 |
責任 | その任務を怠ったときは、会社に対し、これによって生じた損害を連帯して賠償する責任を負います(会社法423条1項)。 その職務を行うについて悪意又は重過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を連帯して賠償する責任を負います(会社法429条1項)。 なお、監査役などと同様に、責任の一部免除(会社法425条、426条)の適用があります。また、責任限定契約(会社法427条)の締結が可能です。 |
4 会計監査人とは
会計監査人とは、会社から委任を受けて、会社の計算関係書類の監査を行う公認会計士又は監査法人です(会社法396条1項)。なお、会社と会計監査人の関係は委任関係にあり(会社法330条)、会計監査人は会社に対して、善管注意義務を負います(民法644条)。
会計監査人の選任、解任、職務などは概要以下のとおりです。。
項目 | 内容 |
---|---|
主な権限 | いつでも、会計帳簿等等を閲覧及び謄写をし、又は取締役及び支配人その他の使用人に対して会計に関する報告を求めることができます。また、職務を行うため必要があるときは、子会社に対して会計に関する報告を求め、又は会社や子会社の業務及び財産の状況の調査をすることができます。(会社法396 条2項、3項) |
主な義務 | ・職務を行うに際して取締役の職務の執行に関し不正の行為又は法令若しくは定款に違反する重大な事実があることを発見したときは、遅滞なく、これを監査役(又は監査役会、監査等委員会、監査委員会)に報告しなければなりません(会社法397条1項)。 ・会計監査報告を作成しなければなりません(会社法396条1項)。 |
主な資格 | 公認会計士又は監査法人でなければなりません(会社法337条1項)。 また会社又は子会社の取締役等と兼務することは禁止されています(会社法337条3項)。 |
選任 | 株主総会普通決議(会社法329条1項)。会計監査人は、株主総会において、会計監査人の選任について意見を述べることができます(会社法345条5項、1項)。 |
任期 | 1年ですが、定時株主総会において別段の決議がされなかったときは、当該定時株主総会において再任されたものとみなされます。(会社法338条1項、2項)。 |
終任 | 任期満了、辞任に加えて、株主総会普通決議により解任できます(会社法339条1項)。会計監査人は、株主総会において、は解任又は辞任について意見を述べることができます(会社法345条5項、2項)。さらに、監査役(会)は、会計監査人に義務違反などがあった場合、解任することができます(会社法340条)。 |
責任 | その任務を怠ったときは、会社に対し、これによって生じた損害を連帯して賠償する責任を負います(会社法423条1項)。 その職務を行うについて悪意又は重過失があったときは、これによって第三者に生じた損害を連帯して賠償する責任を負います(会社法429条1項)。 なお、監査役などと同様に、責任の一部免除(会社法425条、426条)の適用があります。また、責任限定契約(会社法427条)の締結が可能です。 |