資本金額減少の際の「債権者を害するおそれ」とは(大阪高判H29.4.27)
色々な要因で、減資をすることは時々あります。特に、事業再生のため会社規模を小さくする場合や、税務上のメリットをとる場合が多いものと推定されます。
減資の際に問題となるのは、会社法449条5項ただし書です。つまり、減資に対して債権者は異議を述べることができるのですが、社法449条5項は「債権者が・・・異議を述べたときは、株式会社は、当該債権者に対し、弁済し、若しくは相当の担保を提供し、又は当該債権者に弁済を受けさせることを目的として信託会社等・・・に相当の財産を信託しなければならない。ただし、当該資本金等の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないときは、この限りでない。」と定めています。
このただし書の「当該資本金等の額の減少をしても当該債権者を害するおそれがないとき」がどういう時なのかが問題となるのです。割と重要な部分かとも思われますが、あまり裁判例もないようです。特に、債務超過の会社が減資をする際に問題となります。
この点、大阪高判H29.4.27は「資本金の額の減少における『債権者を害するおそれ』については、当該資本金の額の減少によって抽象的に将来に向けて剰余金の分配可能性が高まる(会社財産に対する拘束が弱まる)というだけでなく、資本金の額の減少が債権者により具体的な影響を与えるかどうかを検討して判断すべきである。その判断に当たっては、資本金の額の減少の直後に剰余金の配当等が予定されているか否かに加え、当該会社債権者の債権の額、その弁済期、当該会社の行う事業のリスク、従来の資本金及び減少する資本金の額等を総合的に勘案し、当該会社債権者に対して不当に付加的なリスクを負わせることがないかという観点から行うべきである」としました。
欠損填補するだけの減資であれば、会社財産に影響しないため、「債権者を害する」とは言いづらいと思われます。本件もそのようなケースだったようです。ただし、それだけを理由とすることなく、上記のような諸要因を分析して、判断を下しました。
このあたりが、法律の難しいところでもあり、面白いところです。