小さい優良企業の株価を巡る紛争(株価はどう決まる?)東京地決H27.11.12
世の中には、資本金1億円未満で、優良な企業が多数あります。上場企業のように、誰もが知っているような企業ではありませんが、収益が高いという企業です。そして、そのような企業の多くが、同族企業で、株主が限定されています。
しかし、相続により株が分散されたり、付き合いで出資したり、あるいは従業員持ち株会のようなものを通じて取得するなどした株主がいて、そのような方がいわゆる少数株主になっていることがあります。このような、少数株主が、持株を処分しようとする時に、紛争がおきることが時々あります。例えば、株式取得時には500円しか支払っていないけど、その会社の収益力からすると現在の1株あたりの価格が100万円を超えるようなケースは時々あります。この時、株式を売る側は「100万円でないと売らない!」といい、買う側は「500円でなければ買わない!」ということになり、紛争になるわけです。
この場合、特殊の事情がない限り、強いのは買う側です。売る側が無茶なこと言うのであれば、買う側は「買わない。買わなくても困らない」「他の人に売ってもらって構わない」ということになるのですが、売る側が他の買主を探そうにも非上場会社の株式を買う人はなかなかいません(さらに、定款で、株式の売却には取締役会や株主総会の承認が必要になっていることが多く、簡単には売却できないことが一般的です)。売る側としては、客観的な価値はあ100万円あるのだから、なんとかならないのか考えるのですが、なかなか難しいと言わざるを得ません。
このような紛争について、買う側の主張を全面的に認めたのが東京地決H27.11.12(金融・商事判例1517号54頁)になります。従業員持株会が解散したケースで、一定の手続きを経て会社に買取を求め、その価格決定を裁判所に申し立てました。裁判所は、もともと500円で買い取る旨の規定が持株会の規約にあるのだから500円が妥当としました。
従業員持株会の場合(取引先の持株会なども同じかと思いますが)は、この結論はやむを得ないかと思います。しかし、相続でオーナー株式が分散したようなケースでは、また別の結論もあると思います。
このあたりが、法律の難しいところでもありますが、面白いところです!