同族会社の少数株主対策(東京地判H30.3.22)
同族会社の事業承継で、時々問題となるのが少数株主対策です。ある程度の歴史の長い同族会社の場合、相続などを通じて、株式が分散してしまっているケースがあります。少数株主が多いと、会社の重要な意思決定が難しかったりすることもあり、少数株主を整理する必要が出てくることがあります。
このような場合の王道は、当該少数株主と協議をして、一定の金額で譲ってもらうことです。株価が問題となることが多いですが、ある程度客観的な方法で計算した金額で合意をして、譲渡をしてもらうことになろうかと思います。
しかしながら、どうしても譲渡を応諾してもらえなかったり、連絡がとれなかったりするような場合があります。このような場合、多数株主が、議決権株主の3分の2以上を保有している場合、合法的に少数株主を追い出す(=譲渡させる)ことが可能な方法があります(一般的に「スクイーズアウト」と呼ばれています。)。
ここでは、方法などは詳しくは延べませんが、少数株主は譲渡金額を争うことが可能になっています。では、多数株主側が、譲渡金額を下げる手段をとった後に、スクイーズアウトをした場合、少数株主は泣き寝入りをしなければならないのでしょうか?
この点につき、無理やり株価を下げるなどしたうえでスクイーズアウトした多数株主側の取締役には、責任が発生するとした裁判例が東京地判H30.3.22です。
ある意味で当然の判断ですが、少数株主も株主であり、株式は財産権ですから、きちんと価値に見合う対価を支払わなければ、責任が発生するということです。多数派株主からすると、自分が頑張って価値を上げたのに、少数株主がなんの努力もせずにただ乗りすると感じるようです。しかしながら、もしそうなのであれば、価値が上がる前に整理すべきです。
こういうところが、法律の難しいところですが、面白いところです!