同族会社間におけるトラブルの例(最判H17.2.15)
多くの中小企業は同族会社です。
「同族」といっても、必ずしもずっと仲がいいわけではありません。特に相続などが発生して代が変わると、ほとんど付き合いのない者が株主となることもありえます。また、兄弟で株を持っていたとしても、何かのきっかけで仲が悪くなることもあります。
同族会社で、問題がおきない状況ですと、会社法や定款で本当は行わなければならない手続きを省略して何もしないということがあります。特に、株主総会や取締役会が、ほとんど開催されていない企業はかなりあると思われます。
ところが、同族間で争いになった場合、この手続きに欠けることが、大きな問題となることがあります。例えば、役員報酬決定には定款や会社法で株主総会決議が必要とされているのに、株主総会決議に欠けることから、無効だという主張がされるのです。
手続上の瑕疵は結構怖いです。比較的立証が容易ですし、裁判官も手続上の瑕疵には厳しいからです。ただ、一つ救いとなる最高裁判例があります(最判H17.2.15)。この判決は、あわてて事後的に役員報酬の株主総会決議を得たケースにつき「株主総会の決議を経ずに役員報酬が支払われた場合であっても、これについて後に株主総会の決議を経ることにより、事後的にせよ上記の規定の趣旨目的は達せられるものということができるから、当該決議の内容等に照らして上記規定の趣旨目的を没却するような特段の事情があると認められない限り、当該役員報酬の支払は株主総会の決議に基づく適法有効なものになるというべきである。そして、上記特段の事情の存在することがうかがえない本件においては、本件決議がされたことにより、本件役員報酬の支払は適法有効なものになったというべきである。」として、有効としました。
しかし、この判決があるからといって安心するべきではありません。前述のとおり、手続き上の瑕疵について、裁判官は厳しいことが多いので、手続きはきちんと履践すべきです。
このあたりが、法律の面白いところでもあり、難しいところです。